アート考察  その2 近代工芸と茶の湯 II

アート考察  その2 近代工芸と茶の湯 II

2017-1-31
東京国立近代美術館の瑛九(えいきゅう)展を見に行ったついでに工芸館に寄りました。ここも無料、写真撮影OKで天国です。

撮影機材はFujifilm X-T10 + Zeiss touit 32mm

近代工芸と茶の湯 II (2016.12.17 - 2017.2.19)
<東京国立近代美術館が所蔵する近・現代工芸のコレクションの中から、“茶の湯のうつわ”をテーマに作品を選び出し、近代から現代にかけての茶の湯の造形について概観する>

当方は茶の湯にはまったくうといのですが、
1)同じ陶磁器作家さんが作った作品でも、一般の使い方の陶磁器に対して、茶の湯関連の陶磁器になると値段が一桁アップするということ、
2)陶磁器に大した興味ない人でも、茶の湯に関連する方は茶の湯の陶磁器に異常に反応するということ
の2点を経験しているので、<茶の湯>はなにやら特別な世界であり、見方によっては異常な世界ともいえます。


220点ほどの中で、当方が注目した16点の写真を載せます。ここに載せなかった作品には、北大路魯山人とか富本憲吉とかバ-ナード・リーチとか有名な方の作品も多々あるのですが、名前が有名かどうかは関係なく、この異常に隔離された伝統の世界に、現代的新作がどう食い込んでゆくのかが当方の興味です。

まずは茶室が3つ存在します。
インテリアデザイナー・内田繁(1943-2016)氏が制作し、ミラノ、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、オーストリアなど海外にも巡回した組み立て式の茶室です。壁ではなく、竹材など光を通す素材に囲まれた茶の湯の空間を演出しています。
外の展示物をこの茶室においた時にどういう印象を与えるかを想像してみると、その作品の持つ意味がよくわかります。

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市野雅彦  丹波赤ドベ茶器 2016

その中の一点、この重厚な茶器を見て、この存在感には圧倒されます。自然と融合する茶室空間にさらに溶け合っている作品と圧倒的に存在感を示す作品とどちらが茶の湯でもてはやされるかは知りませんが、わずか数十センチ四方の物体が、空間全体を変えてしまう様はなるほどと焼き物の力を納得してしまいます。こういう存在感のある物を作りたいものだ!
市野雅彦さんは兵庫県の現役作家。

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津金日人夢 青瓷花生 2016

いかにも現代風な作品。伝統と新鋭主張の間の融和と同時に強い緊張関係を感じます。しかし、まだまだ、もっと突き抜けるべきでしょう、伝統に妥協している。
津金日人さんは有田の青瓷作家。

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高橋奈己 白磁水指   2016
当方が興味をもった若い女流作家、高橋奈己さんは2016日本伝統工芸展にも入選(日本工芸会新人賞)し、こんなところにも登場していました(どうやら同じ作品)。今や売れっ子のようです。

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田島正仁 彩釉鉢 2016

これを選んで、後で調べたら、この方も2106日本伝統工芸展で入選(朝日新聞社賞)して、当方が最も印象的作品としてブログで紹介した作品の作家さんでした。

新しい手法を確立すると、やっぱり各界で注目される。これらは単体では魅力的だが、本当に茶の湯の現場に受け入れられるのかは当方には分かりません。本当にいいものは、きっと古い伝統の中でも存在しうるのでしょう。

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ルーシー・リー 鉢  1965

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ルーシー・リー  マンガン釉線文碗  1970

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ルーシー・リー  ピンク線門碗 1975-79

イギリスを拠点とした陶芸家、ルーシー・リーはやはり選んでしまいます。15点の内3点もルーシー・リーになってしまいました。西洋人はもともと持っているものが違うので、日本的陶器を作っても、ひとりでに異質の感覚を放つのです。現代の女性はルーシー・リーに傾倒する方が少なくありません。残念ながら、男の当方には、この女性的感性は真似しようにも真似られません。しかし、当方の作品はある意味、西洋的感覚を陶器に持ち込むことにより、伝統で固まった日本陶磁器の世界を脱出しようとしているのですから、スシー・リーは先生でもあるのです。
ルーシー・リーとバーナード・リーチの対立と和解の物語はおもしろい、どこかで紹介しましょう。-

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岩田藤七 水指彩光  1976  ガラス 宙吹き 

陶磁器のような風貌の中にガラスの色と質感を表現していることに驚きます。吹きガラスで手法的に当方には全く手がでませんが、この感覚は何とか取り込みたいものです。当方はガラスにも足を突っ込んでいるので、ガラス作品もアイデアを得るソースとなりえるようになりました。

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加藤考造  瀬戸黒茶碗 昇竜  2011

多治見の数人いる加藤姓の人間国宝の内の一人。この黒瀬戸に文句をつける人はいないでしょう。

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三輪壽雪(十一代休雪) 鬼萩茶碗 1989

三輪壽雪は萩焼の人間国宝。

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辻 清明   信楽自然釉茶碗  1992

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磯井正美  蒟醤(さんま)梅文干菓子盆   漆器 蒟醤

<さんま>は、丹念に塗り重ねた漆の表面を、ケンという特殊な刀で模様を線 彫りし、そのくぼみに色漆を埋めて乾いたのちに磨き仕上げる技法です。磯井正美さんは高松の人間国宝。<さんま>はもとは中国地方が発祥の地であるが、讃岐漆器と言われるように高松藩(香川県)で育った工芸。京都の伝統工芸展で初めて出会った<さんま>は、古き伝統にもかかわらず、その現代的感性をうならせる魅力に大きなインパクトを当方に与えている。 

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人間国宝・巨匠コーナー 藤土師萌 辰砂葡萄文耳鶴首花瓶 1942

茶の湯とは独立したこのコーナーでは人間国宝の作品で朱色をはじめ、赤系の色合いが感じられる選りすぐりの名品を紹介しています。

藤土師萌(かとうはじめ)、この方も岐阜県(瀬戸)・加藤姓・人間国宝の一人。辰砂は水銀系釉薬で古くから、赤系統の色を出す貴重な釉薬。なんとも魅力的色を出す。

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人間国宝・巨匠コーナー 藤土師萌 紅地金襴手菊花文飾壺 1942

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人間国宝・巨匠コーナー 青野武市 金赤被牡丹文蓋物 1994 ガラス、型吹き

近代日本を代表するグラヴィール作家の一人である青野武市(あお のたけいち)の作品。グラヴィールとは、銅盤などの回転工具でガラス表面を削り、絵画的な文様を表す技法。

気が付けば、やはり人間国宝と言われる方の作品を多く載せている結果になりました。

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美術館を出て、夕暮れの北の丸公園を歩く。今年は梅の開花が早い。

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桜の季節に、当方がよく歩く穴場、北の丸公園の千鳥ヶ淵に内接する遊歩道。この時は人っ子一人いなかった。

伝統と革新のせめぎ合いはとっても、とっても参考になりました。
近代工芸と茶の湯 IIは2月19日までやっています。ご興味ある方はおたずねください。
写真が撮れるからgoodです。

自然教育園は、ユキワリイチゲがやっと咲き始め、フクジュソウとセツブンソウの3者が同時に咲いています。カワセミ・メスは毎日飛び回り、時折オオタカが現れるという、写真ファンには悪くない状況になってきました(2017-2-17)。
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Author:山海旅人
山海旅人
<南方から黒潮に乗って流れ着いた人の子孫と思われる>
趣味:おいしい魚をたべておいしいお酒を飲むこと。お魚の料理もいたします。海が近付くと元気になると人にいわれます。

座右の銘:<芸といふものは実(じつ)と虚(うそ)との皮膜(ひにく)の間にあるもの> 
実写とデフォルメの間に真実があるという意味です。

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