<トーマス・ルフ展>と<革新の工芸> その2

<トーマス・ルフ展>と<革新の工芸> その2

2016-9-16, 9-22
<革新の工芸>は特に心に響く新しい物はなかった。その後行った<第63回日本伝統工芸展>と混ぜながら印象を述べてみます。写真の出どころは<革新の工芸>(東京国立近代美術館工芸館、2016-9-17~12-4)および<第63回日本伝統工芸展>(日本橋三越本店、2016-9-21~10-3)、さらに岡部峯男展(益子陶芸美術館、2015-10-4~2016-1-17)のカタログからのコピーです。

まずは日本伝統工芸展から

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日本伝統工芸展  田島正仁  朝日新聞賞

これは一番印象的でした。多治見の加藤幸兵衛の窯で見たから、ツボをひっくり返して釉薬を流す手法と思われます。ですから、てっきり次の加藤幸兵衛さんの作かと思ったのですが。

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日本伝統工芸展 加藤幸兵衛

今回の加藤幸兵衛さんは賞の取りすぎで一休みかな?

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日本伝統工芸展 高橋奈己  日本工芸新人賞

これは若い方の作品で、興味あって、自分でもやりたいともって注目していました。実際はとっても面倒くさい手法であることが分かってきてウームと思っています。ホルム重視の作品は皆モノトーンであることは、分るのであるが、何とか色立体にしたいというのが当方の方向です。

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日本伝統工芸展 市野悦夫

こういう、本当に伝統のタンジェントでいい作品を作る方向は好きだ。後で出てくる浜田庄司からどれくらい進んだかというと疑問ではあるが、その中にひとりでに作り手の個性がにじみ出るわけで同じタンジェントで挑戦し続けることは是非やり続けるべきであると思うのです。

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日本伝統工芸展  松井浩之

同方向

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日本伝統工芸展 石山哲也

上述の伝統タンジェントから違う方向に行きたいとあがいている作品は全体の90%を占めていました。 しかし、言いたいことはよくわかるのですが、結果としてインパクトがない。この作品は比較的成功していると思うのです。

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加藤清和 日本工芸会奨励賞


これは唐三彩の伝統窯を引き継いだ名門の作家さんですが、この作品は融点の異なるガラスフリットを釉薬に混ぜて、釉薬の流れをコントロールしています。まさに当方のやろうと思っていたガラスの融点の違いで流れを作ろうとしている方向と同じです。この作品は藍三彩と称しています。でも加藤清和さんの作品は唐三彩の作品の方が好きです。今後に期待します。

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日本伝統工芸展  萩野紀子 日本工芸会会長賞

これは銀と赤胴の棒を300本以上継ぎ合わせて形を作っている。とても魅力的です。陶芸に比べて、金属工芸やガラス工芸の方が意匠に力を入れているように見えます。陶芸は偶然性が半分以上占めるので、そういうことになるのでしょうが。その結果陶芸が一番振れ幅の狭いジャンルに見えてしまうのです。

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日本伝統工芸展  本馬昇  日本工芸会新人賞

この作品は今回の展示の中で最もいいと思います。寄木細工の職人さんが、寄木細工はお土産品ばかりでないことを証明するために作り出したものです。85歳の方が新人賞ということがそれを示しています。寄木細工のパターンを裏に隠して、格子越しに見せる。
陶芸以外の工芸の方が斬新なものが多い。

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日本伝統工芸展  野口恵美 

パート・ド・ヴェールの作品。パート・ド・ヴェールは一点しかありませんでした。当方、ガラスの勉強のためにパート・ド・ヴェール/キルンワークの工房に通い始めているのです。パート・ド・ヴェールというのは石膏で型を作ってガラスカレットを詰めて800℃くらいの低温で焼くんです。こういう低温窯のガラス工芸をキルンワークと言います。下のような透明なガラスにしようと思うと高温の窯でくそ熱い中で格闘する必要があります。パート・ド・ヴェールは不透明な作品が中心で、通うところを間違えたと後悔していたのですが、こうやって見ると不透明なガラス立体もいいかもしれない。

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日本伝統工芸展 大槻洋介

伝統工芸展の作品はどれも手に取ってじっくりと眺めれば素晴らしいものであることは間違いありません。しかし、ザックリ見た印象も大事です。陶芸に関してだけ言えば、皆同じくらいの大きさの円形で、色使いも形も突飛なものはありません。極論すればみな同じ。ほんのわずかな違いの中でしのぎを削っています。なにかダイナミズムに欠けて、躍動しません。おそらく突飛なものは事前にはじかれてしまい、審査員のイメージのある範囲のものだけが残ってくるのでしょう。伝統工芸だと言ってしまえばそれまでで、伝統を大切にするならこういう行き方も意味あるとは思いますが、元気でません。もっとダイナミックな陶芸展はどこでやっているのでしょうか?

ここから<革新の工芸>に移ります。 革新のと言っているだけあって、伝統工芸展より革新的というか、作品の振れ幅は大きい。 といってパッと見は特に惹かれるものはありません。

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革新の工芸 中村卓夫 2015, 2016

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革新の工芸  八代清水六兵衛 2014, 2015

以下の3点はもう大御所ですから、革新といっても昔の革新です。これらは古典になるのでしょう。当方は50年前の革新しか同調できないということですか?

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革新の工芸 加藤卓男 1963

これは人間国宝、6代目加藤卓男の作品で、多治見の幸兵衛窯(以前当方のブログで紹介しています)は5代目加藤幸兵衛が作り上げ、7代目加藤幸兵衛が中心に活動しています。このブログの2番目に登場させました。

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革新の工芸 浜田庄司 1958

言わずと知れた、人間国宝の浜田庄司。

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革新の工芸 岡部嶺男  1962


1960年<永仁の壺>贋作事件というのに巻き込まれて、岡部嶺男は人間国宝を辞退したらしいが、当方はそんな事件は知らないから、純粋に岡部嶺男は今一番魅力に感じている作家さんである。
昨年、白金陶芸教室が益子で穴窯を借りて作品を焼いたときに手伝いに行って、たまたま益子陶芸美術館で岡部嶺男展をやっていて、とっても引き付けられた。 以下、その時の展示作品である。

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岡部嶺男展 岡部嶺男 1954

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岡部嶺男展 岡部嶺男 1968

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岡部嶺男展 岡部嶺男 1956

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岡部嶺男展 岡部嶺男 1961

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岡部嶺男展 岡部嶺男 1966


どこの世界でも同じかも知れませんが、伝統が長いジャンルほど保守性が強い。少なくとも伝統工芸展では陶芸がもっとも保守的に見える。そのなかでも新しいことに挑戦して成功している作品は何らかの賞をとっている。これはこれでいいと思うのであるが。   日本では東大から、アメリカではNIHからノーベル賞が出にくいのはなぜか? もっともお金を使っているトップの組織であるのに。   もっと揺れ幅が大きくていいのでは。革新から伝統までの大きな振れ幅の中から画期的作品が生まれ、それが伝統になり、そしてまた革新が芽生えるのではないか。  
 当方、今日は陶芸伝統にもどってロクロの勉強をし、明日はキルンワーク(ガラス工芸)の勉強にゆきます。写真はフォトグラムをやらねばというのが今回の調査の結論。デジタル情報の写真とデジタルアートの融合です。 写真に陶芸にガラスにデジタルデザイン、ハンドメード・マーケットへの出品作品作り、LifeSeqのバイオ新商品作り、実体は、現状、頭の中がグチャグチャ状態です。
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Author:山海旅人
山海旅人
<南方から黒潮に乗って流れ着いた人の子孫と思われる>
趣味:おいしい魚をたべておいしいお酒を飲むこと。お魚の料理もいたします。海が近付くと元気になると人にいわれます。

座右の銘:<芸といふものは実(じつ)と虚(うそ)との皮膜(ひにく)の間にあるもの> 
実写とデフォルメの間に真実があるという意味です。

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